Tellurは、……現在色々物色中です。

「チーム★アメリカ ワールドポリス」(トレイ・パーカー&マット・ストーン、パラマウント映画、2004)

2010年8月12日  2017年2月25日 
†セックスとゲロと首飛びの人形劇

 人形劇って見たことなかったんだ。それとか紙芝居とかも。僕らの時代は順調に空き地や公園が狭くなっていき近所の人との交流も薄れて受験勉強とマンガとゲームが発展した時代だけど別にその事自体は悪くはないのだ。僕の親も今時の若い子は……と年寄りの文句を垂れるけど、でも社会が発展したらどうしてもできないことが出てくるわけであって(と自分を擁護してみる)、むしろ裕福になった証なのだ。だからアニメやドラマ、SFX満載の映画に没頭してても不満に思わなかったのだ、これを見るまでは。
 「チーム★アメリカ」はサウスパークを制作した人が音頭を取っているために、風刺とお下劣なネタがてんこ盛りである。人形同士のセックスが出てくるし(しかも体位のバリエーションが細かくて、上に乗ってる人形がカクカク動いてるよ……)最後の方のアクションシーンは断面を描くくらいグロい。主人公は酒場で良くわからん下品な喩え話で正義に目覚めるし、チーム★アメリカはカイロでイスラム教徒の建物をこれでもかというほど壊しまくる。ちなみにイスラム教徒は当然「ドゥーカ・ドゥーカ・ジハード」としか言わない。ここらへんはロシア語の表現として「ラスプーチン・ボルシチ・ペレストロイカ・グラードー」などとしゃべらせるのと同じかな(あれ、どこかの映画かアニメかゲームか忘れたけどマジでそんな表現してたのがなかったっけ。もしかしたらドイツ語として「ソーセージ・ビスマルク以下略」てな流れだったかも)。
 ついでにストーリーもかなりチープである。そしてこのチープさが良い。いや、恐らくわざとこういうプロットにしているのだろう。前述した主人公の正義の目覚めシーン、僕は何度見てもなぜ主人公が敵の本拠地に行こうとしたのかわからない。ヒロインが主人公に惚れるのも唐突すぎる。サングラスマンは何のイベントで過去のトラウマを乗り越えたのだろう、あの程度で主人公のことが信じられるのか? そして何でフェラで主人公が信頼に値する人間となるんだ!?
 まあ、そんなことはどうでもよく、表情がよく動くのでついつい人形であることを忘れてしまいそうだった。一応釣り糸が映っているのだが、あれはわざとだな。ピアノ線を見せないと「これはCGじゃね?」みたいなクレームが来るから映してるだけだと主張してみる。というか、どうやってあんな複雑な動きをさせてるんだろう。背景も日本の特撮みたい。そしてカイロのカーチェイス。すげえ。人形劇? 下手な映画なんぞ見る気が失せたぜ。マトリックスなんて屁の河童だぜhahaha!
 そしてひたすら悪趣味なグロシーン。人形だからとことんやってやろうとする気概が伝わってきて素晴らしい。一例を挙げるとサメに喰われて水死体となって首切りはもちろん頭部破裂と体中炎上って氏賀Y太と並ぶシチュエーションだ。
 あとは中々似ている金正日とかサンダー★バードなチーム★アメリカとかマイケル★ムーアとか少しオタ入っている人間なら笑えるシーン満載だろう。たぶん僕が気づいていないシーンでも大量にあるんじゃないかな。

 ただ、この作品を風刺とか思想とかの文脈で読むのも面白いけど(そう、製作者がアメリカの現状を憂いておりそれに対する皮肉として見ると激烈に面白いのだ)、ただの人形劇として見るのが良いのではないかと思う。人形劇として多分非常にレベルが高い作品だと思うよ(それはまぐろ帝國の「マンガなぜなに」を風刺として読まない方が楽しめるのと同じで)。正直この手の作品が出てくると何らかの政治的スタンスがあるみたいな風潮にはうんざりしているんだ。まあそんなことを思った僕が一番政治を重ねてしまった証拠だけど。ナオユキの馬鹿!
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B!
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