Tellurは、……現在色々物色中です。

世界の七不思議多言語版

2011年5月29日  2011年5月29日 
Repos Production
人数:2~7人
時間:30分
デザイナー:A.Bauza
★★★ (3/3)
 シド・マイヤーのCivilizationがボードゲームになったことを聞き驚いた人も多いのではないだろうか。僕としてはcivはコンピュータゲームだからこそ複雑な内容と乱数の不運さを楽しめていたので、アナログ化されても人間が処理しきれるのか疑問があった。結局、civは6時間とか7時間かかる超大作となり、コンピュータゲームのように気軽に行えるものではなかった。
 だがこの世界の七不思議はボードゲーム版civに比べて相当簡略化しているはずだが、civシリーズを遊んでいる感覚になる。確かに資材を調達し、大遺産を建築するというコンセプトはcivそのものだが、そんな表面的な部分ではなく深いところがcivっぽいのだ。そう、気軽に遊べる感覚、もう1ターン我慢出来ない感覚、ゲームが終わっても次のゲームを始めてしまう感覚。ついつい遊びたくなる面白さがコンピュータcivにそっくりだ。ボードゲームもコンピュータゲームもお互いに良いところと悪いところがあり、単純に移植しても手を出し辛くなる好例である。

【遊び方】
 最終的な目的は勝利点を一番多く取ること。ただし勝利点の稼ぎ方が、1.金(ただし所持金の1/3換算)、2.大遺産の建造、3.戦争、4.勝利点カード、5.特殊カード(カードに書かれた目標通りにカードを集めて勝利点)、6.特殊資源(同じ種類/全種類のカードを集めることで勝利点)などに分かれている。
 全部で3ラウンドに別れ、1ラウンドごとに7回、アクションを行う。一番初めは各プレイヤーにカードを7枚ずつ配り、プレイヤーはそれぞれ1枚だけカードを選んで「アクション」をする。それが終わると、次は持っていたカードを次の人に回し、再び1枚選んでアクションを行う……。カードの取り方はいわゆるTCG界隈でのブードラと呼ばれる形式だ。7回アクションを行なったら、1ラウンド目が終わる。戦争を行い、勝敗を決めた後で次のカードを使用して2ラウンド目が始まる。
 アクションは、資源の購入や大遺産の建造、建物の建築、軍備拡張(ここまでの4項目はカードを得る処理)、お金稼ぎなど多岐に渡る。大遺産や建物は資源が必要なのだが、2ラウンド目以降の建物は極めて大量の資源を要する。というか、恐らく1ラウンド目は練習ということで必要な資源が少なく設定されている。
 資源を購入し(カードを出す)、建物や大遺産を作り、軍備も怠りなく用意し、勝利点を稼ぐ。これらをバランスよく行うことでトップの位置が見えてくるのだ。
 あ、ランダムに配られた大遺産(というか文明)によって大遺産の建造ボーナスや建造に必要な資源が変化するのもcivっぽいよね。

【感想】
 civが好きなら買うべき。僕が参加してるゲーム会は持ってる人がいるから僕は買わないけどw
 僕が遊んだときは4人でプレイしたが全員がほぼ初めてだった。結果的に各々が採った戦術は、優勝者が軍事寄りのバランス型(ただし特殊カード、特殊資源はなかった気がする)で55点程度、次の人がバランス型で50点前後、その次が勝利点カード重視で48点程度、最後に僕が特殊カード・特殊資源重視で46点だった。偶然かどうかはわからんが、極めてプレイヤー間で差がつかないゲームであった。むろん、この特性はゲームの面白さにつながってくる。
 ルール的にはブードラである上に、全てのカードが公開されている(正確には非公開にすることもできるが、その場合は大遺産完成のフラグとしてゲーム盤に置くか、もしくは換金するかしかできないためゲームには明らかな影響を及ぼさない)ため、1アクションごとに他プレイヤーの点数を計算することも可能。ただし面白くはなくなるが。
 この特性が生きるのは上座と下座を意識した時からだろう。このゲーム、上座の人は下座にとって有利なカードを捨てる必要がある。現在の状況がオープンになっている以上、少なくとも下座に勝たなければ勝利のチャンスが見えないので、たとえ自分にとって好ましいカードを得ることができなくても下座を邪魔する必要が出てくるのだ。ただし、下座の人は自分が邪魔されたかはわからない。この間接的なネチっこい嫌がらせが僕に合ってるんだ。いや、別に僕が嫌がらせ好きなのではなくて直接攻撃されるのが嫌なだけ。
 ゲームのテンポも早い。アクションが全員同時に処理されるので1人当たり7回×3ラウンドのアクションを行うにも関わらず40分で遊べる。このテンポが早いということは勝利点を稼ぎやすいということだが、アクションを手軽に行えるルールも充実している。資源を得て建物を作る系のカードゲームはサンファンがあるが、サンファンとの大きな違いはゲーム序盤でノーコストで出せるカード(資源・建物)が多いことと資源の価値が高いこと。お金さえ払えば他人の資源でも使うことができる点だろう。カードを破棄するだけでも下座の邪魔ができる上に、それによってお金が手に入る。次のアクションでは建物を建築できるという算段だ。どのような形であれ、ゲームに参加する感覚があるのでそれも含めて充実度が高いのではないかと思う。
 得点計算も非常にバランスが良い。このゲーム、1回のアクションで9点以上の点数をもらえるチャンスが数回しかない。3ラウンド目の戦争勝利(両隣に対して勝利5点×2人、さらに両隣の人が-1ずつ与えられることを考えると、ネットすると11点相当となる)、3ラウンド終了後の得点計算で特殊資源によるボーナス(3種類の特殊資源があり、それぞれ1種類ごとには枚数の二乗分の点数となり、1枚ずつでも良いから3種揃えば7点プラスされる。そのため、1種類だけだと3枚で9点。3種類では各1枚ずつで10点)、同じく得点計算時の特殊カードボーナスで運次第だが10点獲得のチャンスはある。つまり、一部の戦術に頼りきると他の部分で勝利点を逃す可能性がある。さらに言うなれば特殊資源も特殊カードも大量に持っている下座へヌケヌケと渡す上座は存在しない。そのためバランスよく点数を取る必要が出る。

 当初は密度が薄く感じたが、今となっては再び遊びたいゲームの1つだ。時間も短いし、あらゆる局面でバランスが考えられている。上座や下座の点数を計算できるようでいて、実際は思わぬ番狂わせがあるなどオープン情報を最大限に利用した形だ。
 ゲーム自体も文明を発展させているような感覚があり、civみたいなゲームが好きな人はハマると思う。次回は是非ともB面のロードス島で遊んでみたい。

補足:ゲーム盤にはA面とB面があって、B面は非常に尖ったデザインとなっている。文中に挙げたロードス島は、他の文明が3段階で大遺産を建造できる(=3回はカードを非公開にできる)のに対しロードス島は2段階しかない。しかも建造コストが高いので序盤は建造できないのだ。建造ボーナスもお金や軍備が手に入るという中盤以降は微妙な性能。要素だけ捉えれば強そうなのだがゲームを総合的に勘案すると恐らく最弱文明の1つ。盤面を見た瞬間に全員からネタ扱いされた。だからこそロマンがあるんだよ。
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