Tellurは、……現在色々物色中です。

「断章のグリム」(15巻まで。以降続刊)(甲田学人、電撃文庫)

2011年10月2日  2017年2月24日 
 感想文を出すなら15巻まで出揃った今がチャンスだと思った。たぶん次か、次の次で終わるんじゃないかな。

 前作のMissingからファンだった。派手な出来事で怖がらせるのではなく、背筋がゾクゾクする展開。僕好みのホラー(というか怪談)だったので、今作も引き続き読んでいた。
 が、良い意味で裏切られた。
 今作はホラーというかメルヘンだ。なぜならば、ホラーにつきものの謎要素が全くない。当然、物語のノリからして異能バトルものなんかでは全くない。
 さて、ホラーの肝は不思議な存在に襲われることだと考えているため、事件が起きるシステム・ルールが明確に定まっている今作はホラーには当てはまらない。あくまで僕の私見だが。実際、主人公たちは敵の正体を明らかにするというよりもいかに後腐れなく解決させるかを物語の核として行動しているし。彼らが謎を解く目的は、事件の解決なのではなくて、被害者をより少なくするためである。解決の手段はその原因になる人物を殺すことだけであり、事実物語中ではその通り殺しているのだ。このように書くとこの作品を知らない人からは「別にわざわざ謎を解かなくても良くね?」と言われるかもしれないが、謎解きの必要性は薄いと思う。逆に謎を解く=物語に関わることで主人公たちのトラウマを抉り続けているので、どんどん状況は悪くなる一方。主人公側が完全に詰んでしまっている。
 しかも能力自体がトラウマを動力源にしており恐怖によって様々な効果を発現させると来ている。本質的には彼らの敵である異端(化物みたいなもの)達と変わらない存在なのだ。
 それが全面に現れたのが12巻~15巻。主人公の支援者たちを殺したり狂わせたりする大盤振る舞い。しかも主人公自身、能力が暴発寸前というバッドエンド目前な雰囲気。このシリーズの感想文を出すタイミングが今しかないのはこれが理由だ。果たしてラノベでも珍しいであろう主要人物全員虐殺エンドは起こるのか。主人公は綺麗な死を遂げられるのか(←既に主人公が死ぬこと前提な予想)。そもそもキャラクターというよりも伏線的な立ち位置だった風乃お姉さまと葉耶はどう絡むのか。この興奮を誰かと共有したいが僕には友達がいなかったのだった。前年無念。
 あとは絵がすごく綺麗だった。シリーズ全部を買うと決めた理由もまさにそれ。部屋に飾っておきたいくらいの美麗さだった。人形っぽく感じた絵柄はシリーズのモチーフであるお伽噺に合っている。最終巻でイラストがなくなったりするのだろうかと別方面でも興味津々(Missing最終巻のアレだが、イラストをなくす対応は正解だったと思う。僕はああ、最終巻で雰囲気を大切にしてるんだなと当時は思っていた。だから今回も最終巻でイラストをなくす「演出」もありだと思う)。

 あ、そうそう、この作品は結構痛い表現が多いことも付け加えておこう。スパッと首が刎ねられるよりも爪を剥がされつつその爪で目を潰される系の表現の方が生々しく痛みを感じるなあと改めて感じた次第。
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