Tellurは、……現在色々物色中です。

「多重人格探偵サイコ」……は飽きたので断念

2014年7月7日  2017年2月24日 
 途中までは面白かったのだ。途中までは。
 っていうか多分通しで読めば今でも面白いはず。だがあまりにも連載が長すぎた。

 長期間の連載というとベルセルクとかファイブスター物語がある。これらと多重人格探偵サイコの違いを考えると前2者はあらかじめ物語が大きいことが読者に知らされていたことだろうか。さらに現代をテーマとしていないので連載期間が長引いても時代遅れの臭いがしにくいのかもしれない。
 多重人格探偵サイコの初期は死体描写と多重人格者による犯罪捜査と出生の秘密だったのだが、いつの間にか秘密結社による日本支配(?)と有名人の都市伝説が引き起こす社会への影響、になってったと思う。ストーリーの根幹は一貫しているのかもしれないが、読んでて初期と最新作じゃあ繋がっていない気がするんだよな。いつの間にかどんどんずれていったように思えて、もしかしたら制作側も風呂敷のたたみ方に苦労してるのか?


 さて、冒頭で時代遅れという悪口を書いたが理由がある。
 Wikipediaによると連載開始が1997年。まだインターネットが、というよりグーグルすら設立されていない太古の昔。ショッキングな死体描写はインターネット以降で徐々に広まっており(ブラクラはもとより、エロゲーだって、一般マンガですら! そして今ではpixiv様で普通に目に入ってしまう)当時の物議をかもす云々が理解できなくなっている。1巻2巻を読み返して思いの外「きれい」な死体で驚いたよ。
 それ以外にも時代が変わったとしか言いようがない社会の変化がいっぱいある。思いつくだけでも
・「定説です」の宗教団体
・9.11による諜報組織のダメさ加減
・タリバンという国相手でない戦争
・アフガン侵攻という国を相手にするしかできないアメリカ
・マイケル・ジャクソン永眠
・伊藤計劃の虐殺器官および伊藤の永眠
・スノーデン氏暴露の本物のスパイ活動
みたいなのがある。実はこれらは別に今作とは何の関係もない。
 しかし、これら1つ1つの事件は多重人格探偵サイコの想像力を超えてしまい作品世界が付いてこれていない感がある。例えば9.11が示した濃厚すぎるほどの思想と思想が争う敵の見えない戦いなんてガクソみたいなある意味で安全で御しやすそうな奴らを超えただろう。
 まあ実のところ、一番今作を時代遅れにしてしまったのは、現実世界の大きな事件の裏側には全ての中核となる組織や思想がなかったことかもしれない。現実世界は悪の組織なんて存在しないし人間を変革してしまう大プロジェクトもない。単なる貧困やら文化の相違やら即時のご利益を求める信心やらが暴走して大事件になったりするだけで、現実はあくまでつまらない現実だ。数多くの事件の裏には実は密かに糸を引いている連中がいて……とはサブカルチャーでよくあるストーリーで、時々陰謀論という形で現実と混同する人もいるが、現実はそんなに「面白く」ない。
 なんだかよくわからない連続猟奇殺人事件が大きな組織に帰着し、それがテロなどの事件を引き起こし国家すら揺るがしてしまうというのはエンターテイメントの基本ではあるが、今作に対して言えばそれこそただの陰謀論めいた話になってしまい現実に追い越されたチャチさを感じてしまう。

 というわけで、部屋を片付けた機会に多重人格探偵サイコを回収業者に渡したのだった。
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