Tellurは、……現在色々物色中です。

「スターウォーズ フォースの覚醒」(J・J・エイブラムス監督、ディズニーピクチャーズ、2015)

2016年2月28日  2017年2月24日 
 2015年は映画の当たり年だったと思う。20世紀から続いたシリーズ物(ターミネーター・ジュラシックパーク、見てないけどマッドマックス)は大絶賛の嵐だし、かと言って新作も全く負けていなかった(キングスマン・アントマン・トゥモローランド・ひつじのショーン、などなど)。そしてダメ押しでスターウォーズ。正直、懐古厨と言われても仕方ないのだが、エピソード4~6が大好きだった。エピソード1~3は冗長な割に肝心のシーンが描かれてなく(例えばエピソード2の後でクローン・トルーパーが大勢力になったとか、エピソード1と2の間のアナキンの成長とか)、ピンポイントなファン向けの映画という印象を受けた。
 しかしやっと新たな物語を紡いでくれる。ありがとう、ディズニー! そして少しはスターウォーズを見習え、庵野カントク!

 スターウォーズというのは人によって期待するものが違うと思うけど、僕の場合は言葉通りの「スペースオペラ」を求めていた。王道のストーリー、壮大な背景、豪華な音楽、魅力的なキャラクター達、それらが宇宙を股にかけて戦う。全然裏切られず、時間があれば何回でも見たい。今回は2D吹き替えだったけど、ぜひとも字幕で生のお声を聞きたいと思った。

 ストーリーは正に王道。実のところ、恐らく伏線とかが教科書通りにある弊害だと思うのだが、常に5分先のストーリーが読める。本当の意味でこの映画で驚いたのは、ラストシーンくらいかな。え、彼眠りについちゃうの!? え、彼、もう出てきちゃうの? もっと登場を引っ張るかと思ったのに、という感じ。ネタバレになっていないと良いが……。
 ただ、5分先のストーリーが読めるというのは王道だからこその楽しみなのだ。水戸黄門で印籠を出すシーンをまだかまだかと待っている感覚が近いかもしれない。観客としてはストーリーとキャラ造形とシチュエーションでスターウォーズ的な先の展開が読めるんだけど、それをどう映像化するか待つ楽しみでもある。エピソード4~6を知ってるとニヤリとするセリフも散りばめられ、いわばセルフパロディも見られるが、
 なお、今作はエピソード4~6で登場したキャラが大量に出てきたこともあり、年寄りどもに対するサービスとしてわざと先の展開を読めるようにしていた可能性がある。とはいえ、過去のエピソードから決別するシーンもあるわけで、次作以降はエピソード4~6の遺産が使わない意志だろうと推測。どういうシナリオになるか楽しみ。
 また、この文章を書いてて気付いたが、あくまでエピソード4~6の要素から出来上がっているんだな。時代が離れているとはいえ、エピソード1~3は別に見てなくても問題ないという……。

 キャラクターは王道の構成。ただ、C-3POとR2-D2はレギュラーで出て欲しかったな。以前、スターウォーズはこの2体のロボットが狂言回しとして傍観者の立場で歴史に立会うみたいな解説をどこかで聞いたので、ついに1キャラクターになってしまったかと思った。でも別に今作のドロイドが悪いわけじゃなく、むしろ前2体のロボットよりも感情が読み取りやすいので観客の受けが良いと思う。単に懐古厨としての発言である。
 今作は助けを待つ姫とか導いてくれる老導師とかがいなかった面白い作品。メインキャラは全員が主人公で、全員にそれぞれ活躍の機会がある。

 音楽はジョン・ウィリアムズ。素晴らしいの一言。所々でエピソード4~6の曲がかかる演出も小憎らしい。本作は新たなストーリーとエピソード4~6を結びつけてる位置のはずなので昔の音楽が意識的に取り入れられてるんじゃないかと思うんだけど、使われ方が最高。重要なシーンでピンポイントで流れるので印象深くなる。正直、こんなメインになるシーンで過去の曲を使ってて大丈夫? と心配になるほど。ストーリーがここまで上出来なんだから音楽は別に懐古厨を喜ばす必要はないよ、と言ってあげたいくらい。新たな曲もまだ聞き慣れてないから印象に残っていないだけで、映画に合っていると思う。ジョン・ウィリアムズの腕はまだまだ健在だ。


 一方で問題もなくはない。本作は敵との対峙および敵からの脱出シーンが頻繁に出てくる。ちょっと数が多すぎて印象に欠けることもあった。
 そして敵が意外と弱い。旧作で忍び込み放題だったデススターの教訓は生かされてないようだな。ついでにカイロ・レン、弱くなかろうか。一般人相手は確かに強いけど、物語後半になりレイたちが鍛えられるに従い、圧倒性が消えていった。

 結論
 大当たりの大作。スターウォーズの完全復活である。
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