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「学校の怪談」シリーズ(平山秀幸監督、東宝、1995~1999)

2016年3月21日  2017年2月24日 
 ホラーは苦手だ。怪談とか少し怖い話は好きだけど、ホラーと呼ばれるジャンルの、特に映画はダメ。ホラー映画は半分スプラッターとかびっくり箱みたいな刺激ありきの映画になっている気がする。
 変な言い方だけど牧歌的なホラーはないのだろうか。

 そう思って考えていたところ、「学校の怪談」シリーズが思い浮かんだ。
 今はもう十分に古い作品になっているこのシリーズ。ターミネーターがリブートされジュラシックパークシリーズとスターウォーズシリーズの最新作が作られまだまだ恐怖の大王が来ていない2015年(今は2016年になってしまったが)から見た感想はどうだろうか。


 単なる子供だましかと思っていたがそんなレベルの低いものではない。もちろんCGや特撮は時代なりに苦笑する部分はあるが、ストーリーなどは一級品。また放送したらきっと大人たちから人気がでるぞ。
 今ではもう雰囲気でしかわからない田舎や下町の学校。スマホもゲーム機も持ってない子供たち。そう、彼らはかつての僕らなのだ。人がいなくなった後で何かが出そうな暗い教室。一晩だけの冒険。大人がこういう遊びをしてみたかったと感じる要素を詰め込んだ作品だ。近年のレトロブームに合致しているんじゃないか。この作品こそ当時の精神で続編でも作ってみれば良いのではないか
 「一夏一晩の冒険」的な子供たちの成長や出会いと別れ、何よりも冒険が終わった後はみんな冒険についてサラッと流しており、怖かった学校が夢のよう。昔観た時は普通の映画だと思っていたけれど今の僕には泣けてしまう。涙腺がゆるくなったのかな。

 怖さは全体的にあまりない。数人でワーワー叫びながら観ると雰囲気が出て怖くなるかな。シーンによっては明らかにミニチュアだったり(学校の怪談2の二宮金次郎を俯瞰で眺めるシーンとか)模型だったり(図工室の粘土像はもう少し頑張って欲しかった……)するのがわかるので恐怖映像として期待しないほうが良い。人気のいない学校を冒険する雰囲気を味わうには最適だろう。観ている人たちそれぞれの怖かった冒険を思い返すと面白さが倍増

・学校の怪談
 流石に1作目だけあって、コンセプト的には最もバランスが取れていると思う。学校を舞台に子供たちが仲良くなり、頼りない先生が成長し、そして十分に怖い。怪異の解決もスマートで、いわゆる「学校の怪談」的な妖怪がたくさん出ており、妖怪博覧としても価値がある。思ったより熊髭先生は怖い。

・学校の怪談2
 コメディ寄りのシーンが多くなった。前作に比べて怪異の原因が不明なので消化不良の感覚がある。ここだけの話、キャラかぶりが多かった印象が……。

・学校の怪談3
 前2作では「本来いるべきいない人」と共に冒険をし、その出会いと別れが印象的だったのだが、今作では消えてしまった。そして一時的とはいえ学校の外に出てしまうので逃げ場のない空間を走り回る怖さも薄い。再婚と新たな家族の連帯という人間関係が非常に見どころであった

・学校の怪談4
 怪談とはいえキャラクター性のある妖怪が多かった前3作に対し、今作はストーリーテリングだけでの怖さを掻き立てる。今作は昼間に起こる怪異のシーンが多く、また学校が舞台になるのは終盤で、しかも登場人物(この作品はなんと人間サイドで冒険するのが1人だけになってしまった!)から怪異を認識され冒険してるので雰囲気が最も異色。上で第2作・第3作の不満めいたことを書いたが、ホラーという性質上第1作目の縮小再生産を続けても仕方がないため、色々差異化する試みは正解と思った。
 今までの学校の怪談シリーズとは雰囲気が異なるが、ストーリーはしっかりしており、見応えがある。特に海に沈んだ学校を探索するシーンは何かが出てきそうで、でもあからさま過ぎて何も出てこない気がする絶妙なバランスだった(何が出てきて、また出なかったかは映画を見てのお楽しみ)。

 シリーズ通して見たが、何とも牧歌的! 数年後に「リング」が公開され、ジャパニーズホラーブームとなるが、ジャパニーズホラーが確立される前の怪談・怖い話の雰囲気が存分に味わえる。
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