Tellurは、……現在色々物色中です。

ポケットモンスターサン

2016年11月25日  2017年2月24日 
 昨日やっとクリアした。非常に面白く、濃度の高いゲームだった。
 ポケモンというゲームは、ひたすら主人公を無個性にし続けている。後の作品に「……!」だけで会話をする異色のキャラとなった初代の主人公レッドが象徴的で、各作品の主人公はゲーム内で一言も話さず、脇役たちがそれぞれの思惑で動く中、まるでブルドーザーのように突き進むことで物語が紡がれる。
 はっきり言うと、そんな意図的に個性を消された主人公なので物語らしい物語なんてあるわけはなく、逆にだからこそプレイヤーはかつての自分や今の自分、将来の自分に主人公を重ねて冒険ができるのだ。クリアするまではゲーム内での自由度はそこまで高くはないけど(つまりフラグを立てないと自由にエリア移動ができないってことね)、クリア後を見据えた冒険する目的ってのは非常に自由度が高く、逆にプレイヤーがそれぞれゲームの楽しみを見出さないと楽しく遊べないかもしれない。だって、ポケモンはクリアしてからの方が遊べる要素は高いのだから、と僕は考えている。
 そんな僕だから初代のような世界の危機的災厄はなく、でもポケモン世界の裏側をそっと垣間見れ、でも別に遊び方は自由だよ、と放り投げられたストーリーというか設定が最高だと思っている(というか、今でこそ伝説ポケモンは世界の起源になったりと大々的に描かれるわけだが、かつてのようにいろんな断片的な情報を元に人間との関わりがほのめかされた「伝説」のポケモンに戻してほしいな。ミュウツーの神秘性ってそこにあると思うんだ)。そりゃストーリーがあればそれはそれで面白いけど、よっぽど上手に作ってくれないとひたすら世界の危機という名の伝説ポケ設定を延々と見させられることになるからなー。

 とは言え、なんだかんだでブラック・ホワイトやXYなんかはストーリーもけばけばしくなく、冒険を楽しく出来ていたので、サンムーンに対しても密かに期待していたのだった。事前の情報公開でジムがなくなったとか、主ポケモンとか、よりにもよってウルトラビーストとか色々変えられた要素があって不安にはなったが、それでも心の底では信頼しており、サン・ムーン両方を予約していた。

 賭けに勝った。
 別格である初代を除けば最高のストーリー。男の子主人公を選択したせいか、偶然であった美少女との出会いと大切な人を救って成長しての別れを描く王道の物語として読めた(ただし一言も話さない主人公なので細部は脳内補完必須)。舞台が南の島々に限定されているせいか、訪れる危機も何となく牧歌的で、一切同情できない悪人が出てこなかったのも好感。いや、主人公が感情を見せないので、本当の悪党が現れてもプレイヤーだけが盛り上がってしまうので、ゲームとのズレを感じてしまうんだよね。その点スカル団なんて単なるチンピラで世界征服なんて大それたことを考えてないっぽいので、こいつら後で改心するんだろうと妙な安心感がある。
 ストーリーはリーリエが軸になるが、演出が憎い。主人公では当然ながらストーリーを動かせないので、リーリエが案内役になる。最初は単なるサブキャラかと思わせて実は悪役と因縁があり……と次々に展開させる。そのままでは主人公が蚊帳の外になってしまうのだが、何とリーリエは主人公と仲が深まるのだ。男の子主人公にあからさまに好意を抱き、そして自分の生き方を見つけて去るエンディングは非常に美しかった(なお、女の子主人公でも楽しめるらしい)。
 さらに、そういう少年少女の恋愛もの・少女同士の友情ものとしてだけでなく、今作は基本に立ち戻り冒険をイニシエーションとして捉えようとしているのだと気付く。ジムの代わりの試練システムだね。ジムは確かにポケモンの原点だと思うけど、そもそもジムを攻略する動機をプレイヤーに見つけさせる必要がある。世界を見るため島巡りをし、その過程で試練をこなすというのは大人になるための儀式としてより自然だと思う。

 というわけで、満足してストーリーをクリアしたが、これ、クリアした後の方が大変なんだよな。4Vメタモン、シンクロ個体、赤い糸、バトルタワー。
 やばい。
ー記事をシェアするー
B!
タグ