Tellurは、……現在色々物色中です。

「レディ・プレイヤー1」(スティーヴン・スピルバーグ監督、ワーナー・ブラザース、2018)

2018年5月1日  2018年5月1日 
 長いよ。でも退屈になるということはなく、見ごたえがあった。ただし長いしネタが往年のサブカルチャーと偏っているので合わない人には合わないだろう作品。

 個人的には一番気になったのは世界観の方だ。スラムめいたところなのに1日中ゲームに没頭してられる余裕。主人公の育ての父は引っ越しの貯金をゲームに費やしてしまうダメ人間なんだけど、別に引っ越せないからといって生きるか死ぬかの瀬戸際的悲壮感があまり感じられなかった。スラムで育ったはずの主人公ですら割と簡単に通販が行えており、それなりに金があるじゃないか。映画冒頭のトレーラーが縦にスタックする中、主人公が地上に降りるシーンは幻想的でかなりワクワクしたんだけど、物語が展開して以降は全くスタックされたトレーラーは出てこなかった。ゲームの世界はいわゆる普通のゲーム世界なのでわくわく感がない。ちゃんと(映画の)現実世界でアクションしようぜ。
 この「現実世界」、本作でも重要なテーマとなってるんだけど、僕としてはこの映画はゲームに耽溺するのは格好悪いと主張するために作られたんじゃないかと疑っている。だって、出てくるゲーマーはかなり格好悪いもの。Gガンダムのモビルトレースシステムみたいにわざわざ体を動かさないとならないゲームシステム。映画のように第三者から見ると、ゲームを遊んでいる光景はかなり不気味である。
 そしてゲームでロストしたため発狂する社会人や学生共。挙句の果てには悪のサードパーティ企業でスーツを着た中年のおっさんが部下を侍らせ大真面目にVRゲームにダイブ! その悪の企業ではゲーム世界を支配するために奴隷をこき使って……いわゆるファーミングしてるんだけど、それなりに名前が知れてる会社でも特にゲーム世界を支配できてるようには思えない体たらく! 10年ほど前の日本のMMOブームの方がファーミングの害はひどかったと思う。スター・ウォーズの帝国軍じゃないんだから、安易にハン・ソロをのさばらせちゃいかんよ。
 「レディ・プレイヤー1」はこんな感じで設定が薄いんだよね。単に固有名詞を借りてキャラクターを集結させるのではなくて、もう少し物語の根幹から「登場」させてくれれば嬉しかったんだけど。

 もう1つ気になったのは、ゲームのテーマであるイースターエッグ探しがどいつもこいつも単なるシステムでしかないってこと。特に1つ目のレース、誰か試してみる人はいなかったの? イースターエッグを仕込んだ人は自由が好きだったとのことだけど、その意思を継いだプレイヤー共はバグを見つけて道を切り開くようなガッツは受け継がれなかったようで。この点、同じゲーム的仮想世界を描いた傑作「百万畳ラビリンス」(たかみち、少年画報社、2015くらい)とは比較にならない。そういや映画内でもゲームを遊んでた連中は与えられたシステムの範疇でしか遊んでなかったっぽいからなあ。ウルティマオンラインのプレイヤー的な遊びを生み出す知恵といたずら心は消え去っている模様。

 んー、面白く観たんだけど、改めて感想文を作るとなると批判が多くなる。これは、映画としての設定・ストーリーが薄いもしくは駆け足気味である一方で、ご都合主義とか言われる部分を懐かしのキャラ・青春の輝いていたキャラを出すことによって回避をしてるんだけど、当然出ているだけでしかないからであろう(もちろんサブカルチャーに対する愛もあるんだろうけど)。場面場面で見ると面白いんだ。よく見るとこんなキャラが出てる! 的な宝探しの要素もあるし。でも1本の映画としては厳しいものがあった。
 この手の作品で単に「◯◯が出た! 戦った! おもしろーい! でもそれだけー」で終わらせないためには、設定とかをちゃんと作り込むべきだと思った。



 その他細々した感想:
・アメリカ人って有名になったら、そんなに顔を売りたいの? 僕は有名になったからと言って人々の前に出ていって「いえ~い」ってやる文化は理解できないな。
・ゲームの世界ですら対人でVRディアブロ的なバトルゲームやって生き甲斐感じるのってかなりディストピア感満載なんだけど……。アメリカ人ってこういうのに憧れがあるの?
・ゲームバランスをぶっ壊すようなアイテムを作り出してはいけない。っていうか、全くバランス取れてないと思うんだけど、本当にこのゲーム面白いの?
・今まで文句を言ったが、この映画で良かった点はアクションシーンでスローモーションになる場面がなかった(または気にならなかった)ところ。SAT(スローモーション・アクション・テスト:ダサい映画はスローモーションのアクションが入っているのでこのテストを考えついだのだ)には合格した。え、「パシフィック・リム:アップライジング」? 当然不合格だった。
・クライマックスが衆人環視の中で1人用ゲームをプレイするオタク(タトゥーが過剰であまり格好良くないアバター)という地獄絵図を生み出したスピルバーグ監督は天才だと感じた。
・主人公周りでネカマやってる人がいないのはなぜ?
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B!
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