Tellurは、……現在色々物色中です。

「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」(ライアン・ジョンソン監督、 2017年、ディズニー)

2017年12月20日  2017年12月20日 
全体的な感想としては、滅茶苦茶高水準。音楽、物語、ビジュアル全てが格好良い。けど、要素要素を見始めると途端にツッコミどころが出る。例えば以下のようなところ。 ①シナリオは詰め込みすぎだろう。  ・描くべき人数が多すぎ(前作では年齢を経たハン・ソロ&レイアを前面に出し、ポー・ダメロン&レイ&フィン&カイロ・レンは主役だが顔見せレベルで済んだ。一方今作ではメインを張るルークとレイアに加え、レイ&フィン&カイロ・レンを書き込むので単純に人が多すぎる)  ・その結果、上映時間が2時間半近くととてつもなくなった  ・せっかく前作で劇的に倒れたフィンを簡単に復活…

神栖→銚子ポタリング

2017年12月12日  2017年12月12日 
2017/11/26(日)に行ってきた。自転車の試し運転。片道20kmなので往復40kmを慣らす目的だったが、終わって調べたら片道30km前後あったんだ。疲れるはずだよ。  基本的に神栖・銚子は田舎なので歩道を歩く人も走る人もいない。そのため、歩道を自転車で走って安全に通行する予定だったのだが、歩道がガタつくことガタつくこと。脇道や駐車場が多く、車道より一段高い歩道はそのたびにアップダウンを繰り返す。アップダウンごとに自転車からお尻にダメージが……。途中から素直に車道を走ることにしたのだった。乗ってる自転車のサドルは安物メッシュタイプで、パッド入り…

文学フリマ東京に行ってきたよ

2017年12月12日  2017年12月12日 
去る11/23(木)、読書会で知り合った人々と共に文学フリマへ行ってきたのだった。同人誌即売会は2、3回行ったコミケしか知らないけど、コミケよりも人は少なかった。これには好印象。コミケの極端な混み具合は行く気が失せるからなあ。あれを見ると人混みが嫌いな人はネットができて良かったね、と本当に思う。  さて、文学フリマ……まあ、活字本なんてそうそう立ち読みで買いたいか否かなんてわかるわけはないから、買い手としては一か八かで適当に購入ってことになる。立ち読みもあまり長めに読むのは気がひけるからなあ。でも立ち読みしてくださいって気軽に声をかけてくれると、多少…

「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」(トラヴィス・ナイト監督、スタジオライカ、2017)

2017年12月5日  2017年12月5日 
巧みに抽象化された日本風冒険物語と言ったところか。  2017年も色々な映画が公開され、よくできた作品も数多かったが、日本人の何割かはこの映画を傑作級として挙げるに違いない。そのくらいよくできた映画であった。  よく言われることだが、海外の人が作った日本風とは、日本人が見て何らかの違和感を覚えることが多く、この映画はほとんどそういった部分がなかったのが評価のポイントである。何も知らないで見ていたら、スタッフロールで思ったより日本人が少なくて驚いたよ。ちゃんとリサーチすればこれくらいのものは作れるのね。  さて、冒頭で「巧みに抽象化された」と書いたが、…

ちまたで話題の1980円ホテルに泊まってきたのじゃ

2017年12月4日  2017年12月4日 
半端なカプセルホテルやネットカフェ、ビデオボックスが泣いて謝るという(僕の感想)1泊1980円。その名も「 1980円ホテル 」! 物は試しと泊まってきた。ちなみに写真はない。  2017年12月2日(土)は東京に行く機会があったため、事前に予約をしていた。そのため当日予約なしで行って宿泊出来るかは不明。最寄り駅は日比谷線入谷駅でそこから歩いて10分近く。公式の地図は コレ かな。ぶっちゃけ立地は悪く、雨の日に荷物を持って歩くのは辛い。そして近くにはコンビニが数件、あとは吉野家と松屋と地元のスーパーしかなく、ファミレスは元よりハンバーガー系のお店がないので夕…

「GODZILLA怪獣惑星」(静野孔文監督・瀬下寛之監督、ポリゴン・ピクチュアズ、2017年)

2017年11月20日  2017年11月20日 
3部作の1作目なんだね。パンフレットを読むまで全然知らなかった。だからラストシーンがあんなのだったのか。  今作のゴジラは「シン・ゴジラ」とは方向性を変えて非リアルな方向性にしたとパンフレットに書いてあった。その目論見は大成功だろう。ツイッターで流れた感想に、「シン・ゴジラ」の方が云々というものがあったが、まさにこのような感想こそ製作者は待っていたと思う。  そもそもゴジラシリーズは好きな作品が人によって異なれど、極めて空想特撮的であり、大人から大人気のVSビオランテですらスーパーX2が出てきて抗核バクテリアだのサンダーコントロールシステムだのワクワ…

「グウェンプール:こっちの世界にオジャマしま~す」(クリス・ヘイスティング、ヴィレッジブックス、2017)

2017年11月17日  2017年11月17日 
海外コミックを買う中で、DCやマーベルもの(いわゆるスーパーヒーローもの)は避けていた。だって世界観がわからないんだもの。日本で言うとガンダム世界みたいなものだと思う。詳しくない人からすると、同じような主人公が何体もいて、敵も同じような連中で、世界設定も同じようなもので、基礎知識が欲しいけど何読めばわからないってこと。  さらに海外コミック特有の設定を省きがち(ここは日本のマンガがくどすぎるのだ)なのが世界観の把握できなさを加速させる。  そのため、スーパーヒーロー系なら細かい設定を知らなくても雰囲気だけで理解できそうな「 ザ・ボーイズ 」のような捻った…

「タイム・シップ」(スティーヴン・バクスター著、中原尚哉訳、ハヤカワSF文庫、2015)

2017年11月17日  2017年11月17日 
SFというジャンルを読む愉しみは、世界が変わる感覚を得られることである。自分が見ている世界は少しベールをめくれば異なる姿を持ち、それに応じて世界に対する自分の見方も変容する。しかしそれだけでは物足りない。世界の真理が知りたいだけなら最先端の物理学の本でも読んでいれば良い。SFの真価は、その変容に対峙する人間の感情や行動を描き出すことにある。変わってしまった人間は今後何を考え、どうするのか。SFがノンフィクションやジャーナリズムなどと異なるのは人間性への言及にあると考える。  そんなSFの面白さを知った人間はひたすら世界が変わる感覚を求め続ける。もう身…

「ブレードランナー 2049」(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、コロンビア、 2017年)

2017年11月1日  2017年11月1日 
初めに書いておくと、僕は初代「ブレードランナー」をリアルタイムで見たわけでも当時の空気を知っているわけでもなく、「ブレードランナー」自体に思い入れは全くない。そのためネットで皆さんが大興奮しても何がそこまで素晴らしいかいまいちピンと来てないのだ。 ・テーマ性  神殺しだのアイデンティティだの都市と孤独だのと言ったテーマは読み取れるんだけど、初代「ブレードランナー」に影響を受けた作品群がオリジナルと呼ばれるようになった後の今の時代で本作品を見ても……と思った。個人的には、西洋の人はどうでも良いことで神に挑もうとすると感じるため、そろそろ神をあっさり超え…

「裏世界ピクニック」(宮澤伊織、ハヤカワ文庫JA)

2017年10月10日  2017年10月10日 
確かこの作品を読もうと思ったのは都市伝説についての小説という触れ込みだったからだっけ。  「裏世界」という諸星大二郎氏が描く異界のような世界を主人公2人が各々の目的で探検するという内容で、そこではくねくねみたいな都市伝説の存在が実在しているという設定。読み進めると都市伝説のキャラクターたちは認知論をベースにした理屈で存在しており……まあ「 奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い 」と読んだ感覚は似ている……怪奇ネタを題材にしたSFと言った感じ。ホラー作品だと甲田学人氏のMISSINGの方が(方向性が違うから当たり前だが)圧倒的に怖かった。  続きが気に…

「奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い」(木犀あこ、角川ホラー文庫、2017)

2017年10月10日  2017年10月10日 
ホラーには馴染みがない僕だが、知り合いから紹介されて読んだ。  ホラー小説の文脈がわからないので不安もあったが、中々面白かった。むしろSFに近い。巻末にこの作品が受賞した日本ホラー小説大賞の歴代作品が載っているが、パラサイト・イヴとか輩出したんだね。そりゃSFとも親和性があろう。  内容的を大まかに書くと、人間の持つ恐怖心を脳科学でハッキングする系列で、似た雰囲気の作品としては「 裏世界ピクニック 」(宮澤伊織、ハヤカワ文庫JA)が挙げられる(そう言えば「裏世界ピクニック」は感想文書いてないな)。超自然的な存在が世の中には実在しており、主人公には知覚でき…

「ゴーレム100」(アルフレッド・ベスター著・渡辺佐智江訳、国書刊行会、2007)

2017年10月10日  2017年10月10日 
先に書いておくと、タイトルである「ゴーレム100」の「100」は百乗である。だから本来は「ゴーレム 100 」なんだけど、面倒だからこの記事では「ゴーレム100」と表記する。 さて、アルフレッド・ベスターの作品はタイポグラフィや言葉遊び、イラストが用いられる傾向がある。ある、と断言したが、実は僕は彼の作品は「ゴーレム100」しか読んだことがないのでその小説としての面白さまではわからない(「虎よ、虎よ!」は立ち読みでタイポグラフィだけ見て満足しちゃった)。 奇抜な表現は「ゴーレム100」でも多く使用されており、文体だけでもスラング混じりのガフ語に加え、蜜蜂…

9月30日のホビージャパンゲーム会へ参加した

2017年10月6日  2017年10月6日 
遊んだゲームは、「 宝石の煌き 」(拡張版込)、「 シークレット:米ソ諜報戦 」。他2つほど軽いのを遊んだけど、合わなかったので割愛。  「宝石の煌き」は相変わらず面白い。コンポーネントが豪華なのが一番良いところ。3回遊んでも、まだ戦略が見えてこない……。  拡張版はゲームの性能を根本から変えるデザインとなっており、飽きさせないようにする工夫が感じられる。初心者が簡単に把握できるようなルールではないんだけど、しっかり遊びごたえがあって良いなあ。  正体秘匿ゲームの「 シークレット:米ソ諜報戦 」。人狼をボードゲーム化し、会話から正体を推理するのをカードアクション…

「ずっとお城で暮らしてる」(シャーリィ・ジャクスン著、市田泉訳、創元推理文庫、2007年)

2017年10月5日  2017年10月5日 
田舎という閉じられた世界に対する恐怖と言うべきか。ネットの発達した現在の方がリアリティを感じると思われる。  僕の親の本家は田舎にあり、親は都会に出てきた人間である。親の話を聞く限り、その昔、表沙汰にはならなかったものの本家の人は金(田畑とか漁業権とか山の権利みたいな意味ね)を騙し取られたとかあったらしい。それも近所など近しい人から。今は何とかその損失も消えたが、それでも僕の親世代の本家の人々は貧乏暮らしだったらしい。なので今でもお金はあまりなく、年金を元にした貯金と家(と二束三文の山)だけが相続できる財産で、本家の長男は姉妹と骨肉の争いをしているら…

サディスティックサーカス2017Autumn

2017年9月19日  2017年9月19日 
行ってきたよ。ちなみにサディスティックサーカス2017Springは こちら 。  出し物1つ目はMr.アパッチ。ジャグリングである。格好良くて最高。はしごの上に乗ったりお手玉やったりしてた。何とはしごの上で7つの玉でお手玉してたんだぞ、すごくない?  2つ目はPAIN SOLUTIONの前半。前半だからショッキングではなかろうと思ってたら針刺しショーおっ始めやがった。J型の針を人体にぶっ刺して、たくさん刺したら紐につなげて空中に吊るし、ブランコみたいにブラブラさせる。さらに紐を1本ずつ切ってた。最終的に乳首の針1本で空中に吊り下がってたけど、乳首って強…

「ダンケルク」(クリストファー・ノーラン監督、シンコピー・フィルムズ、2017)

2017年9月19日  2017年9月19日 
面白い映画である。最初は全く状況説明とかが行われず、お話がわからなかったが、仕掛けがわかった瞬間から一気に引き込まれた。  この映画は撤退戦を抽象化して描いた作品なんだな。そのためドイツ軍は具体的に描かれず、戦闘シーンもほとんどない。そのため戦争映画と言われてもかなり異色作なのではなかろうか。  実はこの映画の中で名前が出る人の方が少ないのだ。スタッフロールのキャストは「登場した順に書くよ!」と書かれており、それもフランス兵だとか列車に張り付いたおっさんとかそんな調子。町山智浩氏の解説( 「町山智浩『ダンケルク』を語る」 )を読むと、陸編の主人公がトミー…

「エイリアン: コヴェナント」(リドリー・スコット監督、20世紀フォックス、2017)

2017年9月19日  2017年9月19日 
エイリアン: コヴェナントを公開日当日の朝イチで見てきたが、見事なまでにおっさんと爺さんばっかりであった(僕もそんなおっさんの一人だが)。カップルや女性グループがいなかったことが、この映画の対象層を表していて納得した。そういやプロメテウスもおっさんと爺さん天国だった気がする。  でエイリアン: コヴェナント、前作の プロメテウス の続きであり、エイリアン1の前日譚という位置づけなのだが、前作プロメテウスの設定の甘さが今作でも見られる。最もダメな設定なのは、エイリアン: コヴェナントでは事件が訪れるのは目的地に航海する途中で面白そうな惑星を見つけたから、と…

ゲームが人生に繋がっていると感じた瞬間

2017年9月13日  2017年9月13日 
僕の親は貧乏性である。  これは親が生まれ育った環境に起因する。ど田舎で育ち、多くは語らないけど10代の頃かなり困窮していたらしい。そのため今でもお金を大事にする。多少ストイック過ぎていて、今時(といっても僕ももう歳だが)の子供としては付いて行けない部分も多々ある。それでも親の生き方というのは尊敬している。  そんなわけで、親は日々の生活でも極めてお金の支出を抑える。具体的には皮膚にあまり触れない生活必需品は近所の安売りスーパーの値引き時にメーカーを問わず大量に買い込む癖があるのだ。ゴミ袋とかフローリング掃除シート、ロウソクやDVDメディアなど、僕が…

「多重人格探偵サイコ」(原作:大塚英志・作画:田島昭宇、角川書店、2016、全24巻)

2017年9月13日  2017年9月13日 
この作品はなかなか感想を書くのが難しく、世間的には有害図書指定を受けた、と説明するのが一番簡単かな? 僕にとっては一時期大塚英志氏の評論が好きで、その創作論の具体例として読んでいた。  とは言え、リアルタイムで単行本を買っていた時はストーリーがとっちらかっていると理解した記憶がある。当ブログでも 記事 にしており、ここで書いた文句の大半は全巻通して読んだ今現在も感想としては変わっていない。とは言え、本作品が完結して全巻読んでみた感想でも遅まきながら書いてみよう。  まず自分でも驚いたのはむかし16巻くらいまで読んでたはずなのに途中から全く覚えていなかった…

「とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢」(ジョイス・キャロル・オーツ、河出書房新社、2013)

2017年8月20日  2017年8月20日 
ある種の精神的な病、トラウマ、神経質な人物が事件を引き起こし、それが現代アメリカの問題を表している作品、とでも言うべきか。日本人の僕からすれば訳者解説での説明が必要だが、読めばなるほど、と思えた。とは言え、技巧は良いのだが、作品のテーマや内容に大して技巧がアンバランスに勝っており傑作とは言いがたかった。  それが一番出ているのは、ストーリー部分。ストーリーはかなり類型的で、ホラーや奇妙な味系を読む人からすれば途中まで読むと落ちがわかる作品がちらほら見られる。人物構成も重なっている作品があることから、そのため読んでて飽きやすい。  それが一番表れたのは…

「メアリと魔女の花」(スタジオポノック、2017)

2017年8月1日  2018年12月3日 
ポストジブリ作品……という評価で良いのだろうか。  リアルタイムで、しかも映画館でジブリ作品を見るのは覚えている限りでは初めてなのだ。  原作は読んでないのだが、偶然手に入れた魔法の力で魔法の国へ行った女の子が嘘をついてしまい、それが引っ込みつかなくなって……というストーリー。現実世界で何の取り柄もないお年頃の主人公というのは、この前見た「 ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち 」に通じるものがあるが、本作はちゃんと冒険が終わると現実世界に戻り成長するので安心して見ていられる。  ところで気になったのだが近年のファンタジー作品は、魔法世界と非魔法世界を比べ…

髑髏城の七人 シーズン鳥

2017年8月1日  2017年8月1日 
初めて髑髏城の七人を、劇団☆新感線を観た。この演劇は客席が360度回展するのが売りになっており、どういうことかわからなかったが、体験してみて納得。これは演劇として凄いことだ(と演劇を見ていないにも関わらず感じた)。  普通、演劇って舞台が1つなので場所の転換があまりなかったり、セットを組み立てる時間がかかったりする。なので演劇は背景を使いまわしたり、場所を動かないものだという思い込みがあった。  この劇場では客席を囲むように舞台が作られ、幕で客が見ることのできるセットを制御している。そのため客席を回転させればシームレスに場所を移動でき、さらに1つの背…

「夜の夢見の川」(シオドア・スタージョン/G・K・チェスタトン 他、中村融 編、創元社推理文庫、2017)

2017年7月27日  2017年7月27日 
この前 感想文 を書いた「街角の書店」の第二弾。今回も不思議なお話盛り沢山だよ。  トップを飾るのはクリストファー・ファウラー「麻酔」。タイトルの段階では歯医者で麻酔を忘れられた/途中できれて阿鼻叫喚、と思いきや、麻酔はかかったんだけど、医者がマッドな素人で色んなところを手術され芸術作品にされてしまったという内容。グロテスクな作品のはずだが、終盤がぶっ飛んでおり、描写の割には嫌な感じが少ない。読者にダメージを与えるなら、いかにもなシチュエーションであり得そうな痛い描写をするはずだから、これは意図されたものかな。半分ギャグにもなっている「手術後」からすると…

「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」(ティム・バートン監督、20世紀FOX、2016)

2017年7月27日  2017年7月27日 
絵は素晴らしいけど設定とシナリオがとっちらかった作品、というのが見終わった後の感想である。  特に設定面は致命的で、この作品はタイムループものというファンタジーの皮を被ったSFであり、さらにループだけでなくタイムトラベルも関わっている。つまり、物語の舞台は現代→1943年へタイムトラベルし、さらに1943年9月3日をループした後、1943年9月3日を経由して2011年で決戦を迎えるのだ(ラストシーンは2011年から再び1943年へ……)。これが複雑でなくて何と言おう。バック・トゥ・ザ・フューチャーですらもう少しわかりやすかった。正直、2時間程度で碌な…

「貞子VS伽椰子」(白石晃士監督、KADOKAWA、2016)

2017年7月19日  2017年7月19日 
ホラーは苦手だが、この作品はタイトルからして笑わせにかかっていると感じたので、DVDで見てしまった。良い意味でも悪い意味でもその期待が裏切られた。  この作品は、「フレディVSジェイソン」とか「エイリアンVSプレデター」的な人気のあるキャラクターをクロスオーバーで出してお祭りにしよう的な作品だと当初は思っていた。つまりホラー要素が薄いか、または単なるスプラッターになっていると思ってたんだ。  でも実際に見てみたらちゃんとしたホラーになっていて面白かった。貞子と伽椰子という2要素がいて、ホラー要素が分散するかと思ったけど、意外と言っては失礼だが、上手く…

「箱入りドロップス」(津留崎優、芳文社、全6巻)

2017年7月19日  2017年7月19日 
青春とは人生の初期に数年で終わってしまうから、光り輝くものなんだよね~と読み終わってから考えた。  ジャンルは4コマ日常系ラブコメ。苦手な人は苦手なジャンルだろう。僕は実のところ、日常系や4コマ形式とは比較的相性が良くて、飽きなければ読めてしまう。6巻で終わるので手軽に読めると思って手を出したのだが……。  このマンガの全ては箱入り娘と評されるヒロインが表している。学校にすら行ってなかった彼女が主人公の家の隣に引っ越し、それから共に同じ高校に通うシーンから物語が始まるが、何と言ってもヒロインの最大の特徴は1人で横断歩道すら渡れないってところだろう。家…

「街角の書店」(フレドリック・ブラウン他、中村融編、創元推理文庫、2015)

2017年7月3日  2017年7月3日 
奇妙な味と呼ばれるジャンルが好きだ。幻想文学に近いがそれよりも不条理さを強調した作品、と捕らえている。しかし不条理小説と読んでしまえるほどナンセンスさや無意味さは少なく、では寓話かと聞かれると恐らく寓話と呼べるほど現実世界とリンクしていない。怪奇小説とも関連がありそうで、確かに読み終わるとゾクッとする作品もあるにはあるのだが、怖さが必要条件というわけではない。正直、奇妙な味というのはジャンルとしては非常にマイナーで、強いていうと先に挙げた幻想文学とか不条理小説に分類されてしまう。  しかし現実とは薄皮一枚隔てて現実感のある異常な物語が、さぞ何か意味を…

「怪物はささやく」(フアン・アントニオ・バヨナ監督、ギャガ、2017)

2017年6月29日  2017年6月29日 
どうして空想の世界に浸るのだろう、と悩んだことがある。これが音楽やら言葉やら絵やら演技やらに秀ていれば、そういう道に進むこともでき、空想も自分の糧となったと胸を張れただろう。悲しいかな、僕は才能がないので、空想は単なる空想で、しかもその世界は当時ハマっていた映画やアニメのパクリでしかなかった。いわゆる二次創作ってやつだ。確かオリジナルキャラも出ていたような気がする。そういう遊びを小学校2、3年生から行い、思春期に悩んだ末、いつの間にか空想の世界への扉は閉ざされていた。  この映画も空想の世界=物語が1人の少年にとってどういう慰めになるか、慰めになって…

「ラ・ボエーム」(日生オペラ)

2017年6月29日  2018年1月17日 
この前、日生オペラの ラ・ボエーム を見たのだよ。 ・日本語オペラは初めて。 ・今までは字幕すら見ていなく、言語をそのまま聞くだけだったので、ある意味でセリフを歌として聞いていたため、重唱はこういうセリフなのかと驚いた。 ・重唱は聞き取りにくかったが、日本語のせいなのか(母音が頻出すると聞き取りづらいと聞いたことがある)、もともと重唱が聞き取りにくいものなのかどちらだろう。 ・しかし、重唱でのセリフがああいう感じで聞き取りづらいってことは、原語でも理解しづらいであろうからに、こればっかりは原語+字幕で見てもわからないなあ。 ・何にせよ、内容を理解するレベ…

「あなたの人生の物語」収録の「あなたの人生の物語」(テッド・チャン)

2017年6月20日  2017年6月20日 
メッセージ 」を見て、改めて「あなたの人生の物語」を読みたくなったのでそれだけ読んできたのだよ。 ・小説では良い意味でのご都合主義(他人や相手を指で指すジェスチャーが宇宙人も同じだったとか)が、映画では説明不足だった。僕は「メッセージ」で宇宙人と地球人でジェスチャーが同じなのはおかしいと書いたけど、小説では言及があったのね(というより映画は単にラッキーなだけだった)。 ・小説だとフェルマーの定理→あらかじめ目的がわかっている→フェルマーの定理を基本とする宇宙人は未来を知っている、の順番で伏線があったのに対し、映画ではそこら辺が駄目な感じでぼかされてい…

「劇場版BLAME!」(瀬下寛之監督、ポリゴン・ピクチュアズ、2017)

2017年6月5日  2017年6月5日 
まさかこの作品が映画化されるとは思ってもいなかった。原作は好きだが、正直、キャラクターが生きてるのか死んでるのか、人間なのかロボットなのか、そもそも現実なのか電脳世界なのか、回想なのか現在の出来事なのかわからない絵柄で(褒めてます)、ストーリーもセリフが少ないこともあって何回も読み返さないと何が起きているのかよくわからないマンガだった。ページをめくるのにも時間がかかり、マンガを読み飛ばさせない戦略はかくの如く行うのかと感心したものだった。  なので、映像化、それも2時間ほどの映画になると聞き、どうなるのか興味があった。  映画を見て感動。原作では単な…

「メッセージ」(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、フィルミネーション他、2017)

2017年6月5日  2017年6月5日 
これ、ウィキペディアで調べたら、アメリカ公開は2016年11月なのに日本公開は2017年5月なのね。何でだろ。  というわけで先週土曜に「メッセージ」を見てきたのだった。  原作であるテッド・チャンの「あなたの人生の物語」はその物語構造もあってすっごくつまらない作品という印象しか残っておらず、予習しようとして内容が思い出せなかった。正直、これ以外もあまりあまり面白いと思えなく、僕はテッド・チャンとの相性は悪いんだなーと感じた。  さて、この作品の肝であるサピア=ウォーフ仮説……ではなく、この作品の一番の特徴は未来が決まっているという決定論的宇宙観だろ…

「母の記憶に」(ケン・リュウ 著、古沢嘉通 他訳、早川書房、2017)

2017年5月24日  2017年5月24日 
この間、第一作目短編集を読み、 著者のことを中国系アメリカ人として強調した感想文 を書いた。僕はそれが間違っていることだとは思っておらず、しかし今作を読み、1点だけ見誤った部分を発見した。  著者の作品はSFというよりももっと広い視野を持った空想のガジェットや発想を元に人間について語っているということだ。それはもはやSFですらない「草を結びて環を銜えん」、「訴訟師と猿の王」と「万味調和」を読むとわかる。前回、芥川龍之介を引き合いに出したが、歴史小説の中にファンタジー色の強い虚構を少しだけ入れ込み現代的なものを読ませる手腕は正に芥川龍之介の得意とする手法だ…

「クズの本懐」(横槍メンゴ、スクウェア・エニックス、全8巻、2017完)

2017年5月24日  2017年5月24日 
高校生以下と大学生以上の物語上の恋愛は異なる。とたいして経験もないのに感じていた。  ティーンエイジャーとそれ以上、ではなく、あくまで高校生・中学生かそれ以上か、という対比だ。  非常に感覚的な話なのだが、少なくとも「日本」の「男性向け」「マンガ」業界で描かれる「コメディ」寄りの恋愛というのは高校生・中学生の恋愛に特殊な意味付けをしていたと思う。このマンガを読んでその思いがはっきりとした。  さっさと結論を書くならば、それは処女性というものだ。少女向け・女性向けマンガはたとえキャラクターが学生であっても性行為を厭わないケースが見られるが、男性向け、特…

ナノブロックを作ってみた

2017年5月17日  2017年5月17日 
初めてナノブロックに触ってみた。普段はレゴブロック専門。  本屋などでおもちゃとしてではなく、インテリアとして売られているナノブロックは、果たしてレゴブロックを脅かすのか興味があった。  今回買ったのは こちら 。人体模型だ。  最初に箱を開けた感想はちっちゃい! 大人向けというより、手先が不器用だと大人でも作りにくい。それはわざわざナノブロック用のピンセットが売られていることからもわかる。個人的には、あまりにも小さいのでおもちゃとして作り甲斐はないなあ。  ブロックの種類もレゴに比べて少ない。全部の製品を調べてはないが、昔の積層タイプしかないイメージ。…

「紙の動物園」(ケン・リュウ 著、古沢嘉通 訳、早川書房、2015)

2017年5月15日  2017年5月15日 
面白い。今更読み始めたのを後悔するほど面白かった。何でもっと早くこの作品を読まなかったのだろう、と思うほどである。実は、この作品を読んだすぐ後で次作の「 母の記憶に 」を注文してしまったほどである。  一般的な西洋SFとは少し異なる情緒豊かな作品群になぜだか安心感を得たのだが、それは著者が中国系アメリカ人という前情報を得ていたせいだろうか。個人的にはSFというより幻想文学的と読んだ方が良く、それもあってSF特有の無機質さが緩和されていたと思う。  本書は日本独自の編集ということもあり、著者の作品の中でもトップレベルの物が詰まっている。次の短編集がどれくら…

サディスティックサーカス2017Spring

2017年5月10日  2017年5月10日 
もう2週間も経ってしまった。4/ 22に サディスティックサーカス2017Spring を見てきたのだった。今はサイトもクローズされているが、 上演前は催し物が紹介されていて面白かったぞ。  この舞台は初めて見たのだが、かなり面白かったので、 ツイッターで流した感想を整理して書く。  全体的にはショッキングというよりアングラなショーと笑いが多く 、非常に楽しめた。でも後述するが、 一部本当に流血もののヤバい出し物があって、 たしかに20歳未満は入場厳禁だろう。  会場はパイプ椅子。 6時間座りっぱなしだと腰とお尻と太ももが死ぬ。 下手するとエコノミー症候群になるので休憩時間は…